収入保障保険はいらない?共働きが遺族年金と団信から判断する方法
子どもが生まれると、「自分に何かあったら、家族の生活費はどうなるのか」が急に現実味を帯びます。調べてみると「収入保障保険はいらない」という記事と「子育て世帯の定番」という記事の両方が出てきて、正直どちらを信じればいいのか迷うんですよね。
この記事では、商品を比べる前に、遺族年金・団信・配偶者の収入という「すでにある保障」を数えて、毎月の不足額から必要性を判断する手順を整理します。保険商品やFP相談への誘導はありません。
- 遺族年金・配偶者の手取り・金融資産で死亡後の不足を補える家庭は、優先度は低い
- 子が小さく貯蓄がこれからの家庭は、毎月の不足額を計算してから金額を決める
- 夫が亡くなる場合と妻が亡くなる場合は、別々に確認する
我が家の前提
30代の共働き正社員夫婦・子どもは3歳と1歳・住宅ローン約4,000万円(夫単独・団信あり)・生活防衛費は生活費6か月分。生命保険は夫の収入保障保険1本のみで、妻名義の生命保険はありません。制度・年金額の確認日は2026年8月5日です。片働き・賃貸など前提が違う家庭では、配偶者の収入、死亡後も残る家賃、金融資産を置き換えて計算してください。不足額が我が家より大きくなる場合も、小さくなる場合もあります。
先に結論|収入保障保険の優先度が低い家庭・不足を確認したい家庭
収入保障保険は「いる・いらない」の二択で決まるものではありません。死亡後の不足を、いまある保障と資産で補えるかどうかで優先度が変わります。まず自分の家庭がどこに当てはまるかを確認してください。
| 家庭の状況 | 確認すること | 考え方 |
|---|---|---|
| 扶養している家族がいない(独身・子なしで配偶者も自立して働ける) | 自分の死亡で生活に困る人がいるか | 遺族の生活費という目的自体がないため、優先度は低い。親などの扶養家族がいる場合は別途確認 |
| 死亡後の不足を金融資産・遺族年金・配偶者の収入で補える | 毎月の不足額がほぼ出ないか | 優先度は低い。資産と収入の見込みが変わったら再確認 |
| 子が小さく、貯蓄はこれから積み上げる段階 | 夫婦それぞれの死亡後の毎月の不足額 | 不足額を計算したうえで、掛け捨てで備える選択肢を検討する価値がある(我が家はここ) |
| 片働き・賃貸・住宅ローンに団信がないなど | 配偶者の収入や団信で補えない分の大きさ | 不足額が大きくなりやすい(家賃・配偶者収入・資産による)。計算を省略しない |
なお、世間の平均保険料は判断材料になりません。生命保険文化センターの2024年度調査では、2人以上世帯の年間払込保険料は平均35.3万円ですが、これは医療保険や個人年金なども含む世帯合計で、家庭ごとの保障内容が混在した数字です。平均に合わせるのではなく、自分の家庭の不足額から決めます。この記事では、その不足額の出し方を順番に説明します。
保険全体(医療・死亡・自動車・火災)をまとめて見直したい方は、先に保険見直しの全体の手順を押さえておくと迷いません。
収入保障保険とは|定額型の定期保険・終身保険・就業不能保険との違い
収入保障保険は、被保険者が死亡または契約所定の高度障害状態になった場合に、遺族などへ毎月一定額を給料のように支払う死亡保険です。名前から「働けなくなったときの保険」と誤解されやすいのですが、病気やけがで生存中に働けない場合に備える就業不能保険とは別の保険です。保障の条件は契約ごとに異なるため、約款で確認します。
特徴は、時間の経過とともに受け取れる総額が減っていくことです。たとえば「60歳まで毎月○万円」という契約なら、加入直後に亡くなった場合の受取総額が最も大きく、満了に近づくほど小さくなります。子どもの成長とともに必要な保障額も減っていく子育て家庭の形に、保障の減り方を合わせやすい仕組みです。

| 種類 | 保障のかたち | 保険料の傾向 | 向いている考え方 |
|---|---|---|---|
| 収入保障保険 | 毎月定額・残りの受取総額は年々減る | 掛け捨てで抑えやすい傾向 | 子の独立までの毎月の生活費に的を絞る |
| 定額型の定期保険 | 期間中、同額の死亡保険金を一時金で受け取る一般的なタイプ | 当初の保障額が同程度なら収入保障保険より高くなりやすい | まとまった一時金を確保したい |
| 終身保険 | 一生涯保障。解約返戻金の有無・水準は商品による | 同程度の死亡保障なら掛け捨て型より保険料が高くなる傾向 | 葬儀費用など生涯続く備えを保険で持ちたい |
収入保障保険は、同程度の当初保障額を保険期間中ずっと保つ定期保険と比べると、保険料を抑えやすい傾向があります。ただし実際の保険料は、年齢・健康状態・喫煙状況・保障期間・特約などで変わります。
保険期間の終わりに近い時期に亡くなった場合でも、最低限の年数分は年金を受け取れる「最低支払保証期間」という仕組みがあります。期間は契約で異なるため、加入時・見直し時に約款で確認してください。
民間保険の前に遺族年金を確認する
必要な保障額を考えるとき、最初に数えるのは民間保険ではなく公的保障です。公的年金に加入している人が亡くなると、要件を満たす遺族は遺族基礎年金を、亡くなった人が厚生年金に加入していた場合はさらに遺族厚生年金を受け取れます。民間保険で備えるのは、この公的保障と家計の収入で足りない部分だけです。
遺族基礎年金の対象は、原則18歳到達年度末までの子(障害等級1・2級は20歳未満)がいる配偶者、または子です。2026年度の金額は、昭和31年4月2日以後生まれの配偶者の場合、基本額84万7,300円+子の加算(1人目・2人目は各24万3,800円)です(3人目以降の子は各8万1,300円)。
| 家族構成 | 年額(2026年度) | 月額の目安 |
|---|---|---|
| 配偶者+子1人 | 109万1,100円 | 約9.1万円 |
| 配偶者+子2人(我が家と同じ構成) | 133万4,900円 | 約11.1万円 |
※2026年度の額(2026年8月5日確認・昭和31年4月2日以後生まれの配偶者の場合)。年金額は年度ごとに改定されます。受給には要件を満たすことが前提で、子が対象年齢を外れると金額や受給の可否が変わります。
亡くなった人が厚生年金の受給要件を満たし、遺族側も続柄・年齢・優先順位などの要件を満たす場合は、遺族厚生年金の対象になります。金額は死亡した人の報酬や加入記録などで変わりますが、受け取れる人も夫・妻・子で同じではありません。現行制度では夫に年齢要件があり、子が受給権者になる場合もあります。ねんきんネットでは加入記録を確認できますが、試算機能は老齢年金向けです。遺族厚生年金の受給可否と見込額は、年金事務所または街角の年金相談センターへ確認してください。
2028年4月に遺族厚生年金の見直しが施行される予定です(改正法は成立済みです)。18歳年度末までの子を養育している間は、見直し後も現行制度と同じ給付が続きます。子が18歳年度末を迎えた後は、原則としてさらに5年間の増額された有期給付と、状況に応じた継続給付の仕組みに移ります。また、改正では遺族基礎年金の子の加算額も引き上げられます。厚労省資料では制度改正時の価格で年約23.5万円から約28万円と説明されていますが、実際の2028年度額は施行時の公式情報で更新します。「子育て世帯には無関係」でも「すぐ打ち切り」でもなく、子育てが終わった後の設計の前提が変わる見直しです。詳細は厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」で確認できます。
夫婦それぞれについて、死亡後の毎月の不足額を確認する
共働きは配偶者の収入を見込める一方で、夫が亡くなる場合と妻が亡くなる場合で、家計への影響は別物です。残された側の働き方の変化、保育や家事の代替費用、遺族厚生年金の額、団信が働くかどうかは、どちらが亡くなるかで変わります。必ず2パターンを別々に確認します。
- 毎月の不足額=死亡後の生活費+残る住居費+教育費の毎月の積立分−遺族年金の月額−配偶者の手取り収入−そのほか継続して見込める収入
- 必要な一時金=葬儀などの一時費用+別枠で確保したい教育費−保険の代わりに充てられる金融資産
- 毎月の不足額を何年間補うかと、一時金をどう備えるかを分けて決める
- 金額はすべて手取りベース・同じ期間でそろえる(総額と月額を混ぜない)
- 教育費は「毎月の積立分」か「一時金」のどちらか一方に入れ、二重に数えない
- 生活防衛費は死亡後の急な出費にも必要。残しておく額を先に決め、全額を保険の代わりに数えない

| 確認項目 | 夫が亡くなった場合 | 妻が亡くなった場合 |
|---|---|---|
| 住宅ローン(夫単独ローンの例) | 団信の対象事由に該当すれば残高が返済される | 団信は働かず、ローン返済がそのまま残る |
| 遺族厚生年金 | 夫の加入記録に加え、妻・子の受給要件を確認 | 妻の加入記録に加え、夫・子の年齢・優先順位等の受給要件を確認 |
| 生活の変化 | 妻の働き方の変化、保育・家事の代替費用 | 夫の働き方の変化、保育・家事の代替費用 |
団信で返済されるのは、対象事由に該当した場合の住宅ローン残高です。固定資産税・火災保険料・マンションなら管理費や修繕積立金といった住居費は死亡後も残るため、これらは式の「残る住居費」や生活費に含めて計算します。保障の条件は契約ごとに異なるので、団信の内容も確認が必要です。団信と生命保険の重複をどう整理するかは、こちらの記事が担当しています。

「何歳まで」という保障期間は、末子の教育が終わる時期、残された配偶者の収入見込み、退職時期、金融資産、住宅ローンの残り方から考えます。「子が22歳まで」といった一律の正解はなく、進路や家庭の前提で変わります。
我が家の契約例|月15万円を家計に当てはめるときの確認点
ここからは我が家の実例です。といっても「この金額が正解」という話ではなく、現在の契約を前の章の確認項目に当てはめて点検する一例として読んでください。
我が家の契約
- 子どもが生まれたのを機に、夫(私)が収入保障保険に加入
- 月15万円支給タイプ・保険料は月2,800円程度
- 夫単独ローンの団信に加入した後も、契約は変更していない
- 妻名義の生命保険はない
- 医療保険・がん保険(夫婦合計で月13,300円程度)は解約し、生命保険はこの1本のみ
※月15万円・月2,800円程度は加入時点の我が家の契約例です。保険料は年齢・健康状態・喫煙状況・保障期間・最低支払保証期間・特約などで変わるため、同じ金額で加入できることを示すものではありません。
解約した医療保険・がん保険と収入保障保険は、備えるリスクが違うため、単純な「値下げ」の比較にはなりません。我が家の考え方は「生活防衛費など急な出費に備えられていれば、他の保険は不要」というものです。生存中の医療費などは生活防衛費(生活費6か月分)で受け止め、保険に任せるのは、貯蓄では備えきれない「死亡後の長期の生活費」だけに絞りました。
我が家の支出や手取りをすべて公開していないため、ここでは月15万円が適正かという結論までは出しません。夫死亡時なら、子2人の遺族基礎年金に遺族厚生年金と妻の手取り収入を足し、さらに月15万円を受け取った場合に不足が残るかを見る、という当てはめ方になります。正直、月15万円がどの家庭にも合うわけではありません。答えはそれぞれの家計の数字で変わります。
また、妻が亡くなった場合の不足額の確認は、妻に生命保険がない我が家でも欠かせない項目です。妻に保険がない状態が一般の家庭にもそのまま当てはまるわけではなく、夫死亡時とは別に、同じ手順で確認する必要があります。なお、医療保険を持たない判断の詳しい考え方は、こちらの記事で書いています。

受け取り方と税金|契約関係で税目が変わる
収入保障保険の保険金は、毎月の年金形式のほか、一括で受け取れる場合もあります。かかる税金は「一括か年金か」だけでは決まりません。被保険者・実際に保険料を負担した人・保険金受取人の組み合わせで税目が変わります。契約者と保険料負担者が異なる場合もあるため、税務では実際の負担者を確認します。
| 契約の関係 | かかる税金 |
|---|---|
| 被保険者=保険料負担者で、相続人が受け取る(例:夫が被保険者・保険料負担者、妻が受取人) | 相続税。条件を満たす死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠(相続人以外が受け取る場合は使えない) |
| 保険料負担者=受取人 | 所得税。一時金で受け取ると原則一時所得、年金で受け取ると雑所得 |
| 被保険者・保険料負担者・受取人がすべて別人 | 贈与税 |
相続などで年金形式の受給権を取得した場合は、受給権そのものに相続税などが関係し、毎年受け取る年金への所得税は初年が全額非課税、2年目以後は課税部分が段階的に増える仕組みです(課税部分から対応する保険料を差し引いた額が雑所得になります)。
「一括なら相続税」と単純化はできません。実際の扱いは約款と保険会社の案内で契約関係を確認し、判断に迷う場合は税務署や税理士に確認してください(出典:国税庁タックスアンサーNo.1750・No.4114・No.1620。記事末尾の参考資料参照)。
収入保障保険でよくある質問
- 共働きなら収入保障保険はいらないですか?
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一律には決まりません。遺族年金・配偶者の手取り収入・金融資産で死亡後の毎月の不足額を補えるなら優先度は低く、子が小さく貯蓄がこれからの家庭は、不足額を計算したうえで検討する価値があります。夫が亡くなる場合と妻が亡くなる場合で結果が変わるため、必ず別々に確認してください。
- 遺族年金はいくらもらえますか?どこで確認できますか?
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遺族基礎年金は2026年度の場合、昭和31年4月2日以後生まれの配偶者で基本額84万7,300円+子の加算です(子1人で年109万1,100円・子2人で年133万4,900円)。受給要件を満たすことが前提で、金額は年度ごとに改定されます。遺族厚生年金は、亡くなった人の報酬・加入記録に加え、遺族の続柄・年齢・優先順位などで受給可否が変わります。ねんきんネットでは加入記録を確認できますが、遺族厚生年金の受給可否と見込額は年金事務所等へ確認してください。
- 団信に入っていれば死亡保険は不要ですか?
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団信で返済されるのは、対象事由に該当した場合の住宅ローン残高です。生活費・教育費のほか、固定資産税や火災保険料など死亡後も残る住居費は団信では賄えません。また、夫単独ローンの団信は、妻が亡くなった場合には働きません。団信と生命保険の重複を整理した記事で、削れる保障と残す保障を確認してください。
- 保険金を受け取ると税金はかかりますか?
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被保険者・実際の保険料負担者・受取人の組み合わせにより、相続税・所得税・贈与税のいずれかの対象になり得ます。一括と年金形式の受取総額や税負担の違いも、契約条件と受取人の状況で変わります。約款と保険会社の案内で契約関係を確認し、個別の判断が必要な場合は税務署や税理士に確認してください。
- 何歳まで・月いくらで設定すればいいですか?
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一律の正解はありません。月額は「死亡後の毎月の不足額」(生活費+残る住居費+教育費の積立分−遺族年金−配偶者の手取り収入など)から、期間は末子の教育終了時期・配偶者の収入見込み・金融資産・住宅ローンの残り方から考えます。家庭の前提が変わったタイミングで見直してください。
まとめ|必要額は公的保障と家計の不足から考える
収入保障保険を検討する順番は、商品比較からではありません。遺族年金・配偶者の手取り・団信のあとも残る費用を数えて、夫婦それぞれの「死亡後の毎月の不足額」を出すところからです。不足が小さければ収入保障保険の優先度は低くなります。不足がある場合は、収入や資産で補う方法と比べたうえで、その一部または全部を掛け捨ての収入保障保険で備える選択肢があります。我が家は月15万円・月2,800円程度の契約を続けていますが、これは我が家の前提での一例で、金額も期間も、それぞれの家計の数字で変わります。
▶次に読む1本|保険全体を固定費として見直す手順は、こちらの記事で順番に進められます。

免責事項
本記事は個人の体験と公開情報の調査に基づく一般的な情報で、特定の保険商品への加入・解約をすすめるものではありません。制度・年金額は2026年8月5日時点の確認情報で、今後変更される可能性があります。保険の要否・金額・税務の判断はご家庭の状況で異なるため、契約内容は約款・保険会社の案内で、公的年金は日本年金機構・年金事務所で、税務は税務署・税理士へご確認ください。
